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大阪なおみ選手のメッセージ,スポーツは政治と切り離すべき?

マイノリティーの発信は自由?危険があるのはたしか

 大阪なおみ選手が全米オープンで2度目の優勝を果たしました。

 先月8月23日に米ウィスコンシン州で黒人男性が背後から警察官に数回にわたり銃撃された事件を受け,大坂選手は8月27日にニューヨークのウエスタン・アンド・サザン・オープンの準決勝の棄権を表明。その後、参加を発表し今大会で優勝。準決勝から優勝までの期間中,大坂選手は一貫して「黒人差別に抗議する」メッセージを発信し続けました。

 今回の一連の報道に対して様々な意見が飛び交っています。大阪なおみ選手のメッセージに肯定的な意見が目立ちます。非常に勇気ある決断だったと思います。人種差別に対して一人のアスリートがメッセージを発信することは自身の立場(プロテニスプレーヤー)を危うくすることもありますし,昨今の情勢を鑑みれば命の危険すらあったわけです。

 

過去にロンドン五輪サッカー男子3位決定戦。試合後に韓国代表選手の一人が竹島の領有を主張するメッセージを掲げたことがありました。オリンピックではこうした政治的メッセージを発信することはオリンピックの根幹に反しているとして当時話題に上がりました。

 

オリンピズムムの根本原則 

5. オリンピック ・ ムーブメントにおけるスポーツ団体は、 スポーツが社会の枠組みの中で営まれ ることを理解し、 政治的に中立でなければならない。 スポーツ団体は自律の権利と義務を持 つ。 自律には競技規則を自由に定め管理すること、 自身の組織の構成とガバナンスについ て決定すること、 外部からのいかなる影響も受けずに選挙を実施する権利、 および良好なガ バナンスの原則を確実に適用する責任が含まれる。

オリンピック憲章より抜粋

今回のケースは?

 今回はオリンピックではなく,テニスの全米オープン。大会は主催・運営共に全米テニス協会です。先ほど述べた8月27日にニューヨークのウエスタン・アンド・サザン・オープンの準決勝を大阪なおみ選手が棄権を表明したことに対し,運営側が大会の一時延期を決めるという形で大阪なおみ選手の抗議に応えていました。

 スポーツによるメッセージの発信がネガティブなものでなく,誰に対しても平等や自由を求めるものであれば,主催・運営側がそれに応えるという事例ができました。これがプラスに働くように各大会の主催・運営側には「なんでもかんでも選手のメッセージだから発信しよう!」「表現の自由だ!」と思考停止せずに,そのメッセージによって誰かが傷つくようなことは避けてほしいですね。

教育者目線で

 自分の考えを伝える手段は多くありますが,子どもにとっては簡単ではありません。私自身,「感想を書きなさい」とか「考えたこと・感じたことを自由に話してみましょう」なんて課題が苦手でした。教員として勤務していたときにも,言語化(言葉にして表すこと)に難しさを覚える子が多いように感じました。自分の思い・考えを伝える方法は言葉だけではないと思ってくれれば,苦手意識を持たずに済むかもしれませんね。言葉でなくとも態度や表情,絵や楽曲で表現する方もいますから。

まとめ

 

 大阪なおみ選手の一連のメッセージの発信には肯定的な意見が目立ちました。大阪選手のように立場ある人が「自分が今起きている社会問題に対して,どのような考えをもっているのか」を発信することは勇気ある決断ですが,各大会の主催・運営側には盲目的にならずに冷静な対処が必要だと思います。

 また,このブログのように一個人が情報の発信,自分の考えを社会に放つハードルは年々低くなっています。それに伴って子どもたちに対し,情報モラル教育は欠かせない時代になっています。私たち大人も自分の発信したメッセージで誰かが傷つかないように気を付けたいですね。